
宅地建物取引業者(宅建業者)には、事務所ごとに「従業者名簿」を備え付けることが宅建業法によって義務付けられています。
しかし、実務の現場では「兼業している場合の対象者は?」「従業者証明書番号はどうやって振るの?」「新規申請時の書き方は?」など、取扱いや記入方法に迷うケースが少なくありません。
本記事では、宅建業専門の行政書士が、従業者名簿の正しい書き方やケース別の対象者の範囲、保存期間、備え付けを怠った場合の罰則について、公的なルールに基づき分かりやすく解説します。
正しいルールを理解し、コンプライアンスを遵守した健全な宅建業の運営にお役立てください。
このページで説明する書類が必要な場面
- 宅建業免許申請 様式番号 第2号 添付書類(8)宅地建物取引業に従事する者の名簿
- 免許取得後 宅建業者が備え付ける書類
- 宅建士 登録申請 ※宅建業の実務経験証明時
スポンサーリンク
宅建業における「従業者名簿」とは?
従業者名簿とは、その事務所で宅地建物取引業の業務に従事している者の情報を記載した法定帳簿のことです。
宅建業法第48条第3項において、宅建業者は「事務所ごとに、従業者名簿を備えなければならない」と明確に規定されています。
これは、誰が宅建業の業務を行っているかを明確にし、責任の所在を明らかにするためです。
この名簿は宅建業免許の申請時、免許を受けた後や宅建士登録の際に作成、使用します。
事務所が複数ある場合は、事務所ごとにそれぞれ作成します。
従業者証明書との違い
よく混同されるのが「従業者証明書」です。この2つはセットで考える必要があります。
- 従業者名簿: 事務所に備え付けて保管しておく「リスト(帳簿)」
- 従業者証明書: 従業員が業務中に携帯し、顧客から請求された際に提示する「身分証(カード)」
「従業者名簿に記載されている人物 = 従業者証明書を発行・携帯する人物」となります。名簿に載っていない人物に従業者証明書を発行することはできません。
【状況別】従業者名簿に記載すべき「対象者」の範囲
「自社の従業員をどこまで名簿に載せるべきか」は、自社の事業形態によって国土交通省のガイドラインで明確に基準が分かれています。
ケース1:業者が「宅建業のみ」を営む場合(専業)
原則として、代表者、役員(非常勤の役員を除く)、およびすべての従業員が記載の対象となります。 受付、秘書、運転手などの業務に従事する者も含まれます。
※ただし、宅建業の取引に直接的な関係が乏しく臨時的に従事する者や、監査役、農業協同組合における監事は該当しません。
ケース2:業者が「他の業種を兼業」している場合
建設業など他の事業を兼業している場合は、代表者、宅建業を担当する役員、宅建業の業務に従事する従業員が含まれます。
※業者が「宅建業を主として営む場合」は、全体を統括する一般管理部門(総務・経理など)の職員も該当します。
※非常勤の役員や、主として他の業種を担当し宅建業の業務比重が小さい役員、監査役等は該当しません。
ケース3:業務の一部を外部委託している場合(WEB重説など)
近年、WEB重説が可能となり、重要事項説明をする宅建士を外部へ委託することも増えています。 このような場合も、自社の従業者名簿への記載、自社からの従業者証明書の発行が必要です。 自社の宅建士として重要事項説明を行うことは可能ですが、他社の宅建士として重要事項説明を行うことはできません。
重要事項説明を行う宅建業者自身に責任があるため要注意です。
3. 従業者名簿の正しい書き方(各項目の記入例)
従業者名簿には、法定の記載事項を漏れなく記入する必要があります。ここでは特に間違いやすい「番号の振り方」や各項目の書き方を解説します。
従業者証明書番号
従業者証明書番号の記載方法が間違えていないか確認しましょう。
間違いやすい箇所は下2桁の通し番号です。
番号の振り方について
従業者証明書番号は6桁の数字を割り振ります。
仮に6桁の数字を1、2桁目をAA、3,4桁目をBB、5桁目以降をCCとして説明します。
AABBCCという6桁の数字が従業者証明番号となります。
AA・・・従業者が雇用された年(当初免許時点で従業者である場合は、当初免許の年)の、西暦年の下2桁を記載します。
BB・・・従業者が雇用された月(当初免許時点で従業者である場合は、当初免許の月)を記載します。
CC・・・従業者ごとに、重複がないように代表者から始まる通し番号を振ります。代表者が01となります。
AABBCCという6桁の数字が従業者証明番号となります。
(例)「20 08 09」2020年8月に雇用された通算9人目の宅建業従業者ということになります。

【間違いやすいので注意】
同じ年月に入社した社員のグループごとに1から振るのではなく、年月は関係なく従業者となった順番に通し番号を振ります。
申請時に添付する書類での記入方法
各場面での記載例は以下の通りです。
新規申請の場合
第5桁以下のみ記入してください。
(例)「__ _ _01」
免許通知を受け取ったら、第1~4桁について、当初免許年月を書き加えて事務所へ名簿を備え付けます。
(例)「210201」の場合は、2021年2月に免許を受けた通算1人目の宅建業従事者ということになります。
更新申請・免許換え新規申請の場合
事業者が管理している「従業者名簿」から、 上記の振り方がされていることを確認して、転記します。
主たる職務内容
代表取締役、取締役、政令使用人、専任の取引士、営業、総務、経理、営業事務等を記入してください。
複数の職務を兼ねている場合は、主に行っている職務を記入してください。
宅地建物取引士であるか否かの別
専任の宅地建物取引士の場合は、〇印を記入します。
該当しない者は×印を記入してください。
従業者名簿の記載例
各場面での記載例は以下の通りです。
申請時に提出する従業者名簿

新規申請時に記載する従業者証明番号は下2桁の通し番号のみを記載します。
備え付ける従業者名簿

退職者がいる場合は退職者に使用した番号は欠番とし、新たに雇い入れた従業者へは新しい番号を振ります。
宅建士登録のときに提出する場合など、証明書として提出する場合
余白に「原本と相違ありません」と記載し、社名の記入と代表印を押印して提出します。
従業者番号の振り方に間違いがないかを確認しておきましょう。
代表者から続く通し番号が重複していないかチェックしてください。
従業者名簿の保存期間と閲覧義務について
保存期間は「最終記載日から10年」
従業者名簿の保存期間は、「最終の記載をした日から10年間」です(法第48条第3項)。 従業員が退職して名簿に「退職年月日」を記載した後、そこから10年間は名簿を破棄せずに事務所に保管しておく義務があります。
取引関係者からの閲覧請求
宅建業法第48条第4項により、取引の相手方などから従業者名簿の閲覧請求があった場合、業者は正当な理由なくこれを拒むことはできません。
従業者名簿の作成・備え付けを怠った場合の「罰則」
以下のような場合は宅建業法違反となり、重い罰則が科される可能性があります。
- 従業者名簿を事務所に備え付けていなかった
- 名簿に記載すべき人物を記載していなかった(記載漏れ)
- 虚偽の記載をした、番号の振り方がでたらめだった
【罰則の内容】 これらの違反が発覚した場合、「50万円以下の罰金」に処される可能性があります(法第83条第1項第4号)。さらに、監督官庁からの指示処分や業務停止処分といった行政処分を受けるリスクもあります。
面倒な名簿管理や免許申請・更新でお悩みではありませんか?
従業者証明書番号の複雑な採番ルールや、兼業・外部委託時の対象者の判断など、従業者名簿の不備は免許の更新時や行政の立ち入り検査で非常に指摘されやすいポイントです。
本業である不動産業務に専念するためにも、複雑な宅建業法の要件確認や申請書類の作成は専門家にお任せください。
当事務所では、宅建業免許の新規取得から更新、日々の法定要件のチェックまで、行政書士がトータルでサポートいたします。
まとめ:従業者名簿の適切な管理で健全な経営を
宅建業の従業者名簿について解説しました。
- 対象者は誰? → 専業・兼業・外部委託によって基準が異なる。
- 番号の振り方は? → 年月+全体の通し番号(AABBCC)。退職者の欠番再利用はNG。
- 新規申請時は? → 番号は通し番号(下2桁)のみ記載する。
- いつまで保存? → 最終記載日から10年間。
従業者名簿の適切な管理は、宅建業者としてのコンプライアンス遵守と、顧客からの信頼を得るための第一歩です。ルールを正しく理解し、不備のない運用を心がけましょう。 手続きにご不安がある場合は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。
スポンサーリンク