埼玉・群馬で下宿営業の許可を取る要件とは?

空き家やアパートを活用して、シェアハウスや学生寮、長期滞在型の宿泊施設を開業したいとお考えですか?
宿泊料を受けて人を宿泊させる事業のうち、「1ヶ月以上の期間を単位として宿泊させる営業」を営む場合は、旅館業法に基づく「下宿営業」の許可が必要になります。

下宿営業は、一般的な旅館・ホテルや簡易宿所に比べて長期滞在を前提としているため、設備要件に一部緩和(特例)が認められる場合があります。
しかし、施設の詳細な「構造設備基準」は各都道府県が定める「条例(上乗せ基準)」に委ねられているため、県境を越えれば必要な設備やルールが大きく変わる点に注意が必要です。

【この記事のポイント】

  • 下宿営業は「1ヶ月以上」の宿泊が条件。1泊単位で貸し出す場合は「旅館・ホテル」等の許可が必要。
  • 許可取得には、旅館業法だけでなく「都市計画法」と「建築基準法」のクリアが必須。
  • 施設の近くに銭湯などがあれば、「入浴設備の設置」が免除される特例がある。
  • 埼玉県は下宿であっても「手洗い場の消毒液専用容器」や「完全排水(大浴場を設ける場合)」が必須。
  • 群馬県は「客用寝具を定員分備え置く義務」から下宿営業が除外されている(持ち込みを想定)。

本記事では、埼玉県と群馬県における「下宿営業」の施設要件の違いや、シェアハウス運営で失敗しないための許可取得のポイントを詳しく解説します。

※管轄に関する注意事項:さいたま市、川越市、越谷市、川口市(埼玉県)や、前橋市、高崎市(群馬県)などの「保健所政令市」では、県条例ではなく各市の条例が適用されます。本記事は原則として「県」の管轄地域における基準を解説しています。

 

 

下宿営業許可の前に確認すべき「2つの法律」の壁

建物の設備を保健所に確認する前に、絶対に確認しておかなければならない重要な法律が2つあります。ここを見落とすと、「物件を購入・賃借したのに、そもそも下宿が営業できない」という致命的なトラブルに発展します。

都市計画法(許可が取れる用途地域か?)

下宿は、どこにでも建てられるわけではありません。都市計画法によって「用途地域」が定められており、例えば「第一種低層住居専用地域」などの閑静な住宅街では、原則として旅館業(下宿)の許可は取得できません(※ただし、一定の要件を満たす寄宿舎等として扱われる場合は建築可能なケースもあります)。まずは市町村の都市計画担当窓口で、予定地が許可可能なエリアかを確認してください。

建築基準法(建物の用途変更)

住宅だった既存建物を下宿にする場合、建築基準法上の用途を「寄宿舎」や「旅館・ホテル等」に変更する手続き(用途変更)が必要になるケースがあります。建物の規模によっては建築確認申請が必要となり、防火設備の追加など多額の費用がかかる場合があります。

 

【県別比較】客室の面積要件と定員基準の違い

下宿営業における「客室の広さ」と「最大定員」の算出方法は、両県で明確な違いがあります。

比較項目埼玉県群馬県
定員基準
(1人あたりの面積)
客室の床面積 3.5㎡ につき 1人床面積 3.3㎡ につき 1人
寝具類の確保(特段の免除規定はなし)「常に定員以上の寝具を備え置く義務」から下宿営業は除外される。

■ 埼玉県の解説
埼玉県では、旅館・ホテル営業と同じく、客室の床面積「3.5平方メートルにつき1人」を定員の基準としています(埼玉県旅館業法施行条例 第6条)。

■ 群馬県の解説
群馬県では、下宿の床面積「3.3平方メートルにつき1人」を超えて宿泊させてはならないと規定されています。また、群馬県条例の非常にユニークな点として、「客用寝具類を常に定員以上の数備えておかなければならない」という衛生規定から下宿営業が明確に除外されています(条例第13条第2項)。これは下宿が長期滞在であり、宿泊者が自身の布団を持ち込むケースが多い実態に合わせた合理的なルールです。

 

下宿特有の「入浴設備」の特例とルールの違い

下宿営業の大きな特徴は、入浴設備に関する「免除規定」が存在することです。

比較項目埼玉県群馬県
入浴設備の免除【国の基準に準ずる】
近隣に公衆浴場がある場合等は、施設内の入浴設備の設置が免除される特例あり。
入浴設備を
設ける場合
配管等の完全排水構造が必須。
(レジオネラ対策が非常に厳格)
耐水材料の敷設、排水勾配の確保
(一般的な衛生基準と消毒)

■ 入浴設備免除の共通ルール
旅館業法施行令により、宿泊者の入浴に支障をきたさないと認められる場合(施設のすぐ近くに銭湯などの公衆浴場がある場合など)は、施設内に入浴設備を設けなくてもよいという緩和措置があります。これを適用するには保健所との事前協議が必要です。

■ 埼玉県の解説
埼玉県内で下宿内にシャワー室や大浴場を設ける場合、配管や貯湯槽が「完全に排水できる構造」であることが条例(第11条)で必須とされています。一般的なアパートのユニットバス等では構造証明が難しいケースがあるため、設計段階での保健所への確認が不可欠です。

 

水回り(トイレ・手洗い)の厳格なルール

長期滞在であっても、トイレなどの公衆衛生ルールは厳格に適用されます。

比較項目埼玉県群馬県
トイレ(便所)と
手洗い設備
流水式手洗い設備に加え、消毒液を入れる「専用容器」の設置が必須定員に応じた適当な数(例:15人に1基等)の便所を確保

■ 埼玉県の解説
埼玉県では、下宿であってもトイレの手洗い設備に「消毒液等を入れる専用の容器」を設置することが条例で必須とされています。市販のハンドソープのボトルを洗面台に置くだけでは不可とされ、壁掛け式などのディスペンサーが求められるケースが多いため注意が必要です。

■ 群馬県の解説
群馬県では、施設の定員に応じた「適当な数」の便所を有することが条例で求められます。シェアハウスなど1軒に多人数が住む場合は、それに比例してトイレや洗面所の増設工事が必要になるケースが多いため、設計の初期段階で保健所と「必要な水回りの数」をすり合わせておくことが重要です。

 

下宿営業に関するよくある質問(FAQ)

Q. シェアハウスを始めるには必ず下宿営業の許可が必要ですか?
A. 契約の性質によります。入居者と「建物の賃貸借契約(普通のアパートと同じ)」を結び、入居者が部屋を生活の本拠として独占的に使用し、清掃等の衛生管理を自分で行う場合は、旅館業の許可は不要とされるケースが多いです。一方、施設側が清掃や寝具の提供を行い、宿泊料として料金を徴収するような施設管理型の運営を行う場合は、下宿営業の許可が必要になります。

Q. 1週間や2週間単位での貸し出しは下宿営業で可能ですか?
A. できません。下宿営業は「1ヶ月以上の期間を単位」とする必要があります。1泊〜数週間単位で貸し出したい場合は、「旅館・ホテル営業」または「簡易宿所営業」の許可を取得するか、「住宅宿泊事業(民泊)」の届出を行う必要があります。

Q. 申請にかかる費用(法定手数料)はいくらですか?
A. 下宿営業の新規許可申請の手数料は、埼玉県が24,000円、群馬県が22,000円(群馬県証紙)です。※保健所政令市の場合は異なることがあります。

 

スムーズな開業は「行政書士」への相談から

下宿営業はシェアハウスや学生寮として活用しやすい反面、「賃貸借と旅館業の線引き」や「建物の用途変更の要否」「定員に応じた設備の確保」など、専門的な判断が求められる壁がいくつも立ち塞がります。もし自己判断で工事を進めてしまい、後から「保健所や消防署の基準を満たしていない」と指摘された場合、多額の追加工事費が発生したり、最悪の場合は計画が頓挫するリスクがあります。

宿泊施設の開業には、保健所だけでなく、消防署(消防法令適合通知書)や建築指導課など、複数の行政機関との専門的な折衝が不可欠です。

確実かつスピーディに下宿やシェアハウスを開業したい場合は、旅館業法や関連法令に精通した行政書士へ早期(物件契約前・設計図面の段階)に相談することを強くお勧めします。


【旅館業許可の専門家をお探しなら 行政書士相川事務所へ】
当事務所では、シェアハウス等のビジネスモデルが旅館業に該当するかの判断から、建物の用途変更の確認、保健所・消防署との事前協議、申請書類の作成まで、複雑な手続きをワンストップでサポートいたします。

埼玉県北部(本庄市、深谷市、熊谷市など)や群馬県(高崎市、前橋市、伊勢崎市など)を中心に、出張対応も可能です。
下宿やシェアハウス施設の開業をご検討の方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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