
「家族が亡くなり相続が発生したが、誰に相談すればいいか分からない」
「銀行やコンサルタントから案内が来たけれど、任せても大丈夫?」
ご家族が亡くなられた後の相続手続き。悲しみの中で、銀行口座の凍結解除、不動産の名義変更、相続税の申告など、期限のある様々な手続きを進めなければなりません。
いざ専門家に頼もうと思っても、「弁護士」「司法書士」「税理士」など国家資格の種類が多く、さらに最近では「相続アドバイザー」といった民間業者も増えており、どこを窓口にすべきか迷ってしまう方が急増しています。
実は、相続手続きは財産の種類や状況によって「法律上頼むべき国家資格者(弁護士・司法書士・税理士・行政書士)」が厳格に決まっています。
この記事では、相続の状況(ケース)別に頼むべき正しい国家資格者と、民間業者(銀行やコンサルタント等)に依頼する際の注意点・違法リスクについて、法律の根拠を交えて分かりやすく解説します。
【ケース別】相続手続きは誰に相談・依頼すべきか?
相続には様々な手続きが含まれており、状況(争いの有無や財産の種類)によって法律上頼むべき専門家(国家資格者)が変わります。ご自身のケースがどれに当てはまるか確認してみましょう。
| 専門家(士業) | 相続における主な役割・得意分野 | 相談すべきケース・お悩み |
|---|---|---|
| 弁護士 | 遺産分割などのトラブル解決、遺産分割調停や交渉の代理、遺言書の検認対応 | 相続人同士で揉めている・争いがある場合 |
| 司法書士 | 実家や土地などの「不動産名義変更(相続登記)」、相続放棄手続き、戸籍収集による相続人調査 | 不動産の相続登記が必要な場合 |
| 税理士 | 相続税の計算、相続税申告書の作成・提出代行、不動産の税務評価、税務調査への対応 | 遺産総額が基礎控除額を超えそうな場合 |
| 行政書士 | 遺産分割協議書の作成(争いがない場合)、自動車の名義変更、事業許認可の承継手続き、農地の届出、銀行解約代行 | 円満な相続で、書類作成、車の変更、お店・事業の引き継ぎや農地がある場合 |
ケースA:相続人同士で「争い(揉め事)」がある場合
依頼先:弁護士
遺産の分け方について相続人同士で意見が対立している、あるいは今後揉める可能性が高い場合は、弁護士一択となります。他の専門家(司法書士や行政書士など)や無資格業者が、報酬を得てあなたの代理人として他の相続人と交渉することは、弁護士法第72条(非弁行為の禁止)により固く禁止されている犯罪行為だからです。
【具体的にこんなトラブルは弁護士へ】
- 遺産分割の対立: 「親の介護をしたのだから多くもらうべきだ」など、当事者同士の話し合い(遺産分割協議)がまとまらない。
- 遺留分の請求(遺留分侵害額請求): 遺言書に「全財産を長男に譲る」とあり、自分の最低限の取り分を請求したい。
- 遺言書の無効・預金の使い込み: 認知症だった親の遺言書の有効性を争いたい、特定の相続人が親の預金を勝手に引き出していた。
【最大のメリット】精神的ストレスからの完全解放
弁護士に依頼する最大の利点は、「代理人」として矢面に立ってもらえることです。感情的にこじれた親族と直接やり取りする強いストレスから解放され、家庭裁判所での「調停」や「審判」に移行した場合でも、法的な根拠に基づいた有利な解決を目指すことができます。
ケースB:不動産の「名義変更」が必要な場合
依頼先:司法書士
亡くなった方が土地や建物(自宅、アパート、田畑、山林など)を所有していた場合、法務局で「相続登記(名義変更)」を行う必要があります。司法書士法第3条の規定により、他人の依頼を受けて法務局への登記申請手続きを代理できるのは司法書士の独占業務と定められています。
【司法書士の主なサポート内容】
- 相続登記(名義変更): 複雑な戸籍の収集から、法務局の厳格なルールに従った登記申請書の作成・提出までを一括代行。
- 古い抵当権の抹消: 亡くなった親の不動産に、昔の住宅ローンなどの抵当権(借金の担保)が残ったままになっている場合の抹消手続き。
- 相続放棄のサポート: 親に多額の借金があり相続したくない場合、家庭裁判所へ提出する「相続放棄申述書」の作成代行。
【重要】相続登記が「義務化」され、罰則の対象に!
法務省の法改正により、2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化されました。「不動産を取得したことを知った日から3年以内」に手続きを行わないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料(罰金に相当)の対象となる可能性があります。「昔のままで放置している」というケースも処罰の対象となるため、不動産がある場合は早急に司法書士へ相談するのが確実です。
ケースC:「相続税」が発生しそうな場合
依頼先:税理士
相続税には、一定の金額までは税金がかからない「基礎控除」という目安があります。
3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
遺産の総額がこの金額を超える場合、相続税の申告が必要になります。税理士法第52条により、税務署に対する「税務代理」や「税務書類の作成」、および具体的な「税務相談」は税理士の独占業務と定められています。たとえ無報酬であっても無資格者がこれを行うことは違法です。
不動産や株式など「相続財産の評価方法」に少しでも疑問点があったり、概算でこの基礎控除額を超えそうだと感じたりした場合は、早めに「相続専門の税理士」へ相談するのが最適です。
税理士に依頼する最大のメリットは、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった複雑な特例制度を正しく適用し、合法的に税金を安く抑えられる(節税できる)点にあります。また、自分たちで無理に申告して計算を間違え、後から税務署の「税務調査」が入って多額のペナルティ(加算税など)を取られるリスクも防ぐことができます。申告には「相続開始を知った日の翌日から 10 ヶ月以内」という国税庁が定める厳格な期限があるため注意が必要です。
ケースD:車の名義変更、事業の「許認可」引き継ぎ、農地の届出、遺産分割協議書を作成したい場合
依頼先:行政書士
相続人全員で話し合いが円満にまとまっており、以下の手続きを進めたい場合は行政書士への依頼が最適です。行政書士法第1条の2により、役所(官公署)に提出する許認可等の申請書類や、「権利義務に関する書類(遺産分割協議書など)」を報酬を得て作成することは行政書士の独占業務とされています。
- 相続人調査・財産目録の作成: 相続の初期段階で必要となる「誰が相続人か(戸籍の収集)」や「どんな財産があるのか」の調査を正確に行い、リスト化してくれます。
- 遺産分割協議書の作成: 銀行口座の解約や名義変更の手続きに必須となる、法的に不備のない遺産分割協議書を作成します。
- 自動車の名義変更(移転登録): 自動車の手続きは、平日の日中に警察署で車庫証明を取得し、さらに陸運局での登録やナンバー変更まで行う必要があるため、書類作成から手続きまで丸投げできるメリットは非常に大きいです。
- 農地を相続した場合の届出・許可申請: 亡くなった方が畑や田んぼ(農地)を所有していた場合、法務局での名義変更(相続登記)とは別に、農業委員会へ「農地法に基づく届出」を行うことが法律で義務付けられています。(期限は相続を知った日からおおむね10ヶ月以内)。また、相続した農地に家を建てたり駐車場にしたりする「農地転用」の許可申請も含め、これら役所への手続き代行は行政書士の専門分野です。
- 事業の「許認可」引き継ぎ(相続承継手続き):
亡くなったご家族が個人事業主で、「建設業」「飲食店」「宅建業(不動産)」「産業廃棄物処理業」などの許可を取得して営業していた場合、その事業(お店)を引き継ぐためには、役所や保健所などの公的機関へ「承継申請」や「届出」が必要です。
この手続きには期限(例:建設業の場合は死亡後30日以内など)が定められており、遅れると許可が完全に失効し、事業や営業を継続できなくなる致命的なリスクがあります。こうした煩雑な行政への承継手続き代行は、行政書士の独占業務です。
よくある疑問:遺産分割協議書は誰でも(自分でも)作成できる?
結論から言うと、遺産分割協議書は基本的に、相続人となる当事者ご自身(自分たち)が作成するものです。
自分たちで作成すれば専門家への費用はかかりません。しかし、財産の正確な表記(不動産の登記簿謄本通りの地番や、銀行の支店名・口座番号など)や、法律上の要件を満たす文言に少しでも不備があると、法務局や銀行の窓口で手続きを拒否されてしまいます。
やり直しになれば、再び親族全員から実印をもらい直し、新たな印鑑証明書を集めるという多大な労力と精神的負担がかかります。
そのため、もし自分たちだけで作成するのが難しく、外部(第三者)に作成や手続きを依頼・代行してもらう場合は、法律の明確な根拠を持った国家資格者(行政書士や司法書士など)に依頼する必要があります。
「相続の代行」を謳う民間の無資格業者や、相続関連の民間資格のみを持つ人などが、報酬を得て遺産分割協議書の作成代行を行うことは、行政書士法などの法律で固く禁じられています。不備なく一発で手続きを完了させ、のちのトラブルを防ぐためにも、外部を頼る際は法律に基づく専門家を選ぶことが不可欠です。
「自動車・事業の許認可承継・農地の届出」といった役所への手続きは行政書士の管轄ですが、「不動産」の法務局での名義変更(相続登記)は司法書士の管轄です。司法書士は自動車や営業許可の手続きを業として行うことはできず、逆に行政書士は不動産の登記を行うことはできません。
(遺産分割協議書の作成自体は、争いがなければ行政書士、司法書士、弁護士のいずれも対応可能です。不動産と農地、車、店舗経営などの事業が同時に絡む場合は、互いに連携している専門家事務所にまとめて依頼するのが一般的です。)
注意!民間業者(銀行やコンサルタント)と国家資格者の違い
近年、国家資格を持つ士業だけでなく、銀行や民間のコンサルタント会社が「相続手続きサポート」などのサービスを提供しています。これらを利用する際の違いと注意点を知っておきましょう。
銀行・信託銀行の相続サービス
多くの金融機関が「遺産整理業務」などを提供しています。窓口が一つにまとまるため安心感がありますが、銀行員自身が代理人として法律トラブルの交渉や不動産登記、税務申告を行うことは法律上できません。
実態としては、銀行が窓口となり、提携している司法書士や税理士に業務を「外注」する形となります。そのため、専門家への実費・報酬とは別に、銀行への高額な手数料(最低でも100万円程度~)が発生するケースが多い点に注意が必要です。
相続代行業者・コンサルタント・民間資格者
最近よく見かける「相続代行」や「相続コンサルタント」といった業者のほか、「相続アドバイザー」「相続診断士」といった肩書きを持つ人に依頼する場合も、大きな注意が必要です。
「民間資格」と「国家資格」の決定的な違い
「相続アドバイザー」や「相続診断士」などは、特定の団体が認定する「民間資格」です。法律に基づき国が認めた「国家資格(弁護士・司法書士・税理士・行政書士など)」とは根本的に異なります。
そのため、民間資格を持っているからといって、法律に基づく遺産分割の交渉、登記申請、税務申告などを直接代行する権限(独占業務)は一切ありません。彼らができるのは、あくまで「一般的なアドバイス」「手続きのスケジュール管理」「各国家資格者への橋渡し・紹介」のみに留まります。
【重要】違法行為(非弁行為など)のリスクと最新の法改正
民間資格者や無資格の業者が、報酬を得て法的な交渉を行ったり、登記申請や税務申告を行ったりすることは、弁護士法(非弁行為)や司法書士法、税理士法に違反する犯罪行為です。
さらに、令和8年(2026年)1月に行われた行政書士法の改正をはじめ、無資格業者に対する国の規制は年々厳格化しています。例えば、無資格の業者が遺産分割協議書の作成等を行う際、「書類作成料」としてではなく、「コンサルティング料」や「システム利用料」「サポート手数料」などと名目を変えて実質的な報酬を受け取る行為も、明確に法律に触れる(違法行為となる)ことが示されています。
もし違法な業者に手続きを任せてしまった場合、手続き自体が無効になったり、後から正規の専門家に依頼し直すことになり費用を二重に支払う羽目になったりするなど、依頼者自身が大きな不利益を被るリスクがあります。
費用の構造にも注意が必要です。
良心的なコンサルタントもいますが、業者への「コンサルティング料」や「代行手数料」が数十万円かかり、さらに実際に手続きを行う専門家(司法書士や税理士など)への報酬が別途発生するため、最初から専門家に直接依頼するよりも総額が大幅に割高になるケースが少なくありません。
また、国家資格者は法律に基づく厳しい倫理規定があり、万が一のミスに備えた損害賠償保険等で守られているのが一般的です。一方で民間業者の場合、トラブルが発生した際の責任の所在が曖昧になりがちです。依頼を検討する際は、費用体系や責任範囲(「誰が」実際の法的手続きを行うのか)を事前にしっかりと確認することが不可欠です。
まとめ:相続を成功させる第一歩は「適切な専門家選び」から
ご自身の状況に合わせて、最初の窓口となる専門家を正しく選ぶことが、時間と費用を無駄にせず、トラブルなく適法に相続手続きを完了させる最大の秘訣です。
しかし現実の相続では、「実家と車があり、預金も複数ある」「税金がかかるか不安だし、借金があるかもしれない」といったように、複数の専門分野が複雑に絡み合うケースがほとんどです。
もし、「自分のケースでは、具体的にどの専門家に依頼すれば最適なのか分からない」「何から手をつければいいか整理してほしい」とお悩みでしたら、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。
当事務所では、お客様の現在の状況や財産の内容を丁寧にヒアリングし、今後の具体的なスケジュールや、「まずは誰に何を依頼すべきか」といった、あなたにとって最適な手続きの進め方をアドバイスいたします。
もちろん、当事務所で対応可能な業務のご依頼もお受けできるほか、必要に応じて信頼できる適切な国家資格者をご案内することも可能です。違法な民間業者に騙されないためにも、まずは国家資格者による正しい診断を受けることをお勧めします。
詳しいサポート内容や無料相談のご案内については、以下の詳細ページをご覧ください。